天理市生まれの赤いとうもろこし「大和ルージュ®」(広報誌ふれあい2025夏号)
奈良県天理市の美しい里山では、耕作放棄地の増加という深刻な問題に直面しています。この課題解決に向けて立ち上がったのが、「福住村プロジェクト」です。プロジェクトの中心人物である福住地域営農組合の組合長、辻沢昌彦さんは、地域の未来を守るべく、新しい農業のカタチを模索しています。
※ふれあい誌面とは内容が異なります。
耕作放棄地の課題に挑む奈良の希望!天理市生まれの赤いとうもろこし
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赤いとうもろこし「大和ルージュ®」
天理市で誕生したばかりの特別なとうもろこしが注目を集めています。それが、日本初の赤いスイートコーン「大和ルージュ®」です。まるで宝石のように鮮やかな赤い粒が特徴で、福住地域の新たなブランド作物として大きな期待が寄せられています。
この記事では、この「大和ルージュ®」の魅力や、無農薬・無肥料にこだわる栽培方法、そして耕作放棄地の縮小を目指す辻沢さんの熱い思いに迫ります。
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奈良県天理市の【大和ルージュ】
耕作放棄地の縮小に取り組む、奈良県天理市。課題解決の一案として立ち上がった福住村プロジェクトなど、地域の農業に向き合う辻沢昌彦さんに、天理市で誕生したばかりのとうもろこし「大和ルージュ®」や農業への思いなど、広くお話を伺いました。
生鮮で出荷できる状態が良いものを選別する作業に時間が取られ、新鮮なうちに収穫・出荷できる量には限界があるそうです。また、農薬を使っていないため虫害も多く、廃棄が多いのも悩みでした。そこで生まれたアイデアが加工品です。加工品ならば、選別を後回しにして一気に収穫し、虫食い部分をカットして使うことでロスを減らすこともできるため、人手不足と採算面をカバーできると考えたのです。
「地域の料理グループ“あのかか屋”さんに試作してもらった中から、まずはポタージュスープの商品化を決め、来年の発売を目標に動いているところです」。
試作は、コーンポタージュらしく粒感のあるスープでしたが、オーガニックという特徴を生かして離乳食にも使えるようにと、改良を重ねていく予定だそうです。辻沢さんは、「パッケージに貼ってあるシールのイラストは地元の小学生に描いてもらったものです。右側の点々は大和ルージュ®をイメージしているんですよ」と、やさしい笑顔で教えてくれました。
天理に輝く赤い宝石「大和ルージュ」
奈良県天理市の山間部では昔から稲作が盛んでしたが、現在は休耕田や耕作放棄地が増加しています。そして、その課題を解決するために大和高原の玄関口に位置する福住地区で立ち上がったのが「福住村プロジェクト」です。
福住村プロジェクトでは、農薬を使わない安心安全な野菜のブランド化や町内に点在する休耕田を活用した野菜の栽培を行っています。また、休耕田は福住地域営農組合のメンバーが管理しています。
福住地域営農組合の組合長・辻沢昌彦さん(69)は、さつまいもとあじまるみ大根、そして2022年に天理市の種苗メーカーが開発した日本初の赤いスイートコーン「大和ルージュ®」を栽培していると案内してくれました。現在、合計5000株を栽培しているとのことです。
キラキラと輝く粒がまるで宝石のような大和ルージュ®は、福住ブランドを高めることにも期待が集まる、華やかな見た目のとうもろこしです。
畑では、種まきから一ヵ月ほどの大和ルージュ®が成長しており、実が成長するとヒゲも赤くなります。収穫時には1本1本皮をむき、袋詰めにして出荷されます。
「栽培方法は一般的なとうもろこしと同様で、花が咲くまでは見た目の違いもほとんどありません。無農薬・無肥料で育てているので、種まきから収穫までにやることは除草と間引きくらいですが、収穫が始まると一気に忙しくなります。鮮度が命のとうもろこしにとって、収穫から出荷までのスピードがとても重要なんです」と辻沢さんは語ります。
艶々(つやつや)とした赤い実が印象的です。もともと休耕田だった圃場(ほじょう)では、大和ルージュ®の茎は根元が赤くなっています。
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収穫体験の受け入れなど福住を知る取り組みも
農協職員を経て、水稲やトマト、原木しいたけなどの栽培をしていた家業を継ぐ形で、10年ほど前に就農した辻沢さん。農業資材の高騰など、自身がこれまでの農業に変革を求められたことをきっかけに、地域の農地が減っていくことにも危機感を覚えたといいます。人手不足や担い手問題など個人で農業を続けていくことが難しいという課題に向き合うために、近隣の13集落から代表者を集めて結成したのが福住地域営農組合の始まりだったそうです。
「最低限、今ある農地を残さなくてはいけない」という強い思いをもって活動する辻沢さんは、農泊に取り組む高原地域交流協議会にも所属しています。
「高原地域交流協議会が主催する収穫体験の受け入れも行いました。以前は、午前中に干し柿を作り、お隣の山田町にある古い木造の公民館で昼食を食べたあとに、うちの圃場でさつまいもやあじまるみ大根の収穫をしてもらう、というような内容でしたね。参加者の方は大阪から来てくださったんですが、普段農業をしていない人たちにも福住の取り組みを知ってもらえる機会だと思っています」と辻沢さんは話します。
この地では、辻沢さんをはじめとする、福住の農業や未来のために尽力する人たちの思いや希望が、大和ルージュ®の実のように輝いています。
収穫されたばかりの大和ルージュ®の断面は美しく、辻沢さんらが試作した大和ルージュ®のポタージュスープのパッケージには、地元の小学生が描いたイラストが使用されています。大和ルージュ®は天に向かってまっすぐ成長します。
まとめ
奈良県天理市の「福住村プロジェクト」は、増加する耕作放棄地という地域の課題解決に取り組んでいます。このプロジェクトの中心人物である福住地域営農組合の組合長・辻沢昌彦さんは、安心・安全な野菜のブランド化を目指し、無農薬・無肥料での農業を実践しています。
特に注目を集めているのが、天理市で開発された日本初の赤いスイートコーン「大和ルージュ®」です。この宝石のように美しいとうもろこしは、福住地域の新たなブランドとして期待が高まっています。
生鮮での出荷には限界があるため、辻沢さんは加工品の開発も進めています。地元の料理グループと協力し、離乳食にも使えるオーガニックなポタージュスープを試作中。地元の小学生が描いたイラストをパッケージに採用するなど、地域全体を巻き込んだ取り組みが魅力です。
担い手不足や農地の減少に危機感を覚え、「最低限、今ある農地を残さなくては」という強い思いを持つ辻沢さん。収穫体験イベントを通じて、多くの人に福住の農業を知ってもらう活動も積極的に行っています。
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