山梨・甲州市に息づく「一之瀬高橋の春駒」の魅力と地域を繋ぐ力

つながる。
2025年11月06日
民俗芸能 民俗芸能と農村生活を考える会 東京都千代田区一ツ橋 民俗芸能イベント
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日々の忙しさの中で、ふと立ち止まり、地域に根ざした豊かな文化や、人と人との温かい繋がりに触れたいと感じていませんか?

かつては当たり前だった地域の伝統が失われつつある現代、私たちが「本当に大切にしたい」と感じる価値観は、物質的な豊かさから、心の豊かさ、そして「本物」の体験へと移り変わっています。特に、地域交流や伝統芸能を愛し、ご友人やご家族との時間を大切にされるあなたにとって、その土地の歴史と人々の想いが凝縮された場所を訪れることは、何にも代えがたい喜びとなるでしょう。

今回ご紹介するのは、山梨県甲州市塩山一之瀬高橋地区に伝わる、国の選択無形民俗文化財にも指定されている「一之瀬高橋の春駒(いちのせたかはしのはるこま)」です。この伝統芸能は、ただ見るだけでなく、その背景にある深い歴史と、過疎という困難を乗り越えて懸命に文化を継承する人々の情熱を感じられる、「生きた文化財」です。

「一之瀬高橋の春駒の魅力は何?」、「どうしてこの伝統が地域を活性化させるの?」。この記事を読み終える頃には、その答えが明確になり、きっとあなたも、雪景色を鮮やかに彩るこの活気ある伝統行事を「体験したい」と思うでしょう。遠い山里で脈々と受け継がれてきた、心潤す伝統の調べを紹介します。

「一之瀬高橋の春駒」の魅力と地域を繋ぐ力

民俗芸能・その他イベント

>>> 今後の民俗芸能イベントについては、こちらからご覧ください!

・なぜ「春駒」が生まれたか?雪深い山里に息づく伝統と信仰

・華麗なる祝福の舞:「ウマオドリ」と「弁慶」が織りなす感動の光景

・伝統継承のプロフェッショナル:過疎の危機を乗り越えた「保存会の情熱」

・「地域活性化」の鍵:伝統芸能が担う「文化大使」の役割

・体験がもたらす心の豊かさ:あなたと伝統が繋がる未来

・おわりに 心を豊かにする伝統体験への誘い

なぜ「春駒」が生まれたか?雪深い山里に息づく伝統と信仰の歴史

「一之瀬高橋の春駒って、どんな意味があるの?由来が知りたい」。そう思われた方もいらっしゃるでしょう。この芸能は、単なるお祭りではなく、厳しい自然と共に生きてきた人々の切なる願いと信仰が込められた、生活の知恵そのものです。

 

養蚕信仰と道祖神祭りの融合

「春駒」という名称は、現在では行事全体を指しますが、元々は「ウマオドリ(駒踊り)」と呼ばれていました。ここで登場する「馬」は、古くから蚕の守護神とする信仰と深く結びついています。かつて、この地域は織物生産と深い関わりがあり、豊作や家内安全を願う中で、初春に馬が家々を巡って祝福を授けるという形式が生まれたのです。

また、本祭が行われるのは小正月の道祖神祭りの折です。道祖神は、集落の守り神、あるいは縁結びや子育ての神様として信仰されています。春駒は、この道祖神祭りの一環として行われ、新しい年を迎えるにあたり、無病息災と地域の安寧を祈る祝福芸としての役割を担ってきました。白馬の飾りをつけ、乗馬姿を模した「馬役」と、彼らを導く「露払い」の踊りは、賑やかなお囃子に乗って、雪景色の中に温かい活気をもたらします。この活気こそが、地域コミュニティの繋がりを確認し、生活に潤いと希望をもたらす、伝統芸能の真髄なのです。

 

 戦国時代に遡る歴史的背景

その起源は定かではありませんが、この地域が戦国時代に栄えた黒川金山に関わる金山衆によって集落が拓かれたという伝承も残されています。もしそれが事実であれば、「春駒」もまた、数百年の時を超えて受け継がれてきた、歴史的な重みを持つ文化遺産と言えるでしょう。

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『36回民俗芸能と農村生活を考える会 一之瀬高橋の春駒』 A4チラシ表

華麗なる祝福の舞:「ウマオドリ」と「弁慶」が織りなす感動の光景

「春駒」の魅力は、その躍動感あふれる芸能の内容にもあります。家内安全・無病息災を祈る活気ある伝統行事の光景は、観客である私たちの心をも揺さぶります。

 

賑やかなお囃子と華やかな行列

行事の中心をなすのは、「ウマオドリ」です。笛、太鼓、鉦(かね)による賑やかなお囃子に乗って、華麗な飾りをつけた白馬(を模した踊り手)が舞い踊ります。万灯(カミタテ)を先導に、提灯を持った別当、奏者、弁慶、春駒が列をなし、集落の各戸を巡る行列は、視覚的にも聴覚的にも大変魅力的なスペクタクルです。特に、雪が残る季節に行われるため、太鼓の音色と灯籠の鮮やかな色彩が、白い世界に際立ち、見る者を非日常へと誘います。

 

地域社会を繋ぐ重要な役割「弁慶」

この芸能には、単なる祝福ではない、社会的な役割も含まれています。それが、主に子供が務める「弁慶」の練りです。結婚や子供の誕生といった祝い事があった家では、寄進の返礼として、弁慶が道祖神の御札や返礼品を持って巡ります。特に、婚礼があった家での「水祝儀」と呼ばれる盛大な練り込みは、新しいムラの構成員を披露し、地域全体で祝福するという、集落の共同体意識を強める重要な儀式でした。

このような芸能の構成は、「春駒を見れば、その年の集落の動きがわかる」と言えるほど、地域社会の縮図としての役割を果たしてきたのです。

 

 

伝統継承のプロフェッショナル:過疎の危機を乗り越えた「保存会の情熱」

一之瀬高橋地区は、標高1000メートル以上の山間部にあり、かつては炭焼きを主な生業としていました。しかし、生業の変化と共に人口流出が加速し、過疎化と高齢化が深刻な地域です。この影響で、春駒は1989年(平成元年)を最後に一度途絶えてしまうという、危機的な状況に直面しました。

 

集落外との連携による「文化の再構築」

しかし、地域の宝を守りたいという熱い想いは消えませんでした。2008年(平成20年)4月、地区出身者やその子供たちが中心となり、集落から離れた市街地を活動拠点として、春駒の継承活動が再開されたのです。この事実は、伝統継承の新たなモデルケースを示しています。

民俗芸能と農村生活を考える会

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春駒保存会は、もはや集落内だけで活動するのではなく、地域外の連携を取り込み、外部の力を借りながら伝統を守り育てています。これは、過疎化という社会的な課題に対し、「文化財の価値を広く共有し、その共感の輪を力に変える」という、極めて専門的な視点と実行力に基づく取り組みです。保存会の方々は、文化財の積極的なPRと後世への継承に努める、「伝統継承のプロフェッショナル」と言えます。

 

 

 

「地域活性化」の鍵:伝統芸能が担う「文化大使」の役割

一度は途絶えた伝統が、なぜ再始動し、今、地域に活力を与えているのでしょうか?それは、一之瀬高橋の春駒が、甲州市全体の「文化大使」のような役割を果たしているからです。

 

地域外への積極的な発信と交流

甲州市は、この貴重な伝統芸能の価値を広く知らしめるために、外部での披露を積極的に行っています。

甲州市内の重要文化財での披露: 甲州市にある重要文化財「甘草屋敷(旧高野家住宅)」では、毎年春駒が披露されています。歴史的な建造物と伝統芸能が融合することで、観客はより深い文化体験を得ることができます。
地域外の博物館との連携: 神奈川県川崎市の川崎市立日本民家園での披露は、民家園に移築されている「旧廣瀬家住宅」(塩山萩原に所在)との縁によるものです。これは、文化財同士の連携によって、一之瀬高橋の春駒の知的好奇心を満たす価値を、都市部の幅広い層に届けている素晴らしい事例です。
 

 

 

異文化交流を生む「体験」の提供

外部での披露では、観覧者に「ヤナギ」をプレゼントしたり、「弁慶」が最前列の外国の方に御札を渡したりするなど、文化財を通じた地域外・国際的な交流の場が生まれています。伝統芸能は、ただ見るだけの「鑑賞」から、参加者と観客が心を交わす「体験」へと昇華し、甲州市全体の文化的な魅力を高め、人々を惹きつけているのです。「甲州市の春駒を見に行きたい」というは、文化体験を求める私たちにとって、具体的な行動へと繋がります。

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体験がもたらす心の豊かさ:あなたと伝統が繋がる未来

「一之瀬高橋の春駒」を体験することは、単なる観光ではありません。それは、あなたの生活をより豊かにし、家族や友人との絆を深める特別な時間になるでしょう。

 

温かい共同体の「気」を感じるイベント

雪深い山里で、一度は途絶えながらも再開された伝統の調べには、人々の熱意と共同体の温かい「気」が満ちています。賑やかなお囃子を聞き、華やかな衣装に目を奪われるだけでなく、過疎の危機を乗り越えて文化を守り抜こうとする人々の姿に触れることは、現代を生きる私たちに勇気と感動を与えてくれます。

ご家族やご友人と共に甲州市を訪れ、この「春駒」の活気ある舞を目に焼き付けることは、「本物の日本の伝統とは何か」を肌で感じ、「心に残る思い出」を共有する絶好の機会です。伝統芸能がもたらす知的好奇心を満たすと共に、地域の人々との交流を通じて生まれる心の触れ合いは、あなたの日常に新鮮な潤いと豊かさをもたらすに違いありません。

「一之瀬高橋の春駒の継承活動ってどうなっているの?」と知的好奇心を持ったあなたは、もう既に、この伝統の魅力を未来へと繋ぐ、貴重な一歩を踏み出しているのです。

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(写真10)青空に映えるダシ(万燈)(2010年撮影)

おわりに 心を豊かにする伝統体験への誘い

山梨県甲州市に息づく「一之瀬高橋の春駒」は、古来からの養蚕信仰や道祖神祭りを背景に持ち、家内安全と無病息災を祈る歴史的な重みと、華麗な衣装と賑やかなお囃子による躍動感あふれる祝福の舞という二重の魅力を持っています。この貴重な伝統は、集落の過疎という困難を乗り越え、地域出身者と市の連携によって、市街地や地域外の会場で積極的に披露されることで、甲州市の文化的な「大使」のような役割を果たしています。文化財としての価値を外部へ広げ、多くの人々との交流の場を提供し続ける活動は、伝統の継承と地域への活力を与えるという、二つの大きな役割を担っています。この生きた伝統に触れることは、都市生活で忘れがちな心の繋がりや地域の温もりを再認識し、あなたの生活に深い潤いと豊かさをもたらす、かけがえのない体験となるでしょう。

一之瀬高橋の春駒が令和8年1月31日(土)に東京都千代田区一ツ橋で公演します。この機会にぜひ来場されてはいかがでしょうか。(※要事前予約:入場無料)

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